MSXプログラミングで必要なゲーム開発環境【実機編】

MSXプログラミングでのゲーム開発は特別な開発環境が必要ではなくMSX実機で行います。 ファミコンやプレステなどのゲーム機でゲーム開発するには別途開発機が必要ですが、MSXはパソコンですのでMSX実機があればMSXのゲーム開発ができてしまいます。 しかしながらMSXは種類がいっぱいあるし、周辺機機器も何が必要かわからない!という方のために、MSXプログラミングでゲーム開発するのに必要な実機環境を紹介します。

実機環境ではMSX本体とそれを映せるモニター、プログラムをセーブができる機器が最低限必要です。 MSX用のプリンタがあるとなお良いでしょう。 その他プレイ用にコントローラーも欲しいところです。

MSXプログラミングができる本体

実機環境で一番頭を悩ますのが機種選定です。MSXのプログラミングにおいて重要なのはMSXの規格の選定、映像出力方式選定です。MSX1の機種で家庭用テレビであってもMSXのプログラミングはできますが、いずれ高機能の機種、きれいに映るモニターが欲しくなってきます。ここではMSXプログラミングにおすすめの機種の紹介をします。 さいごに、MSXのプログラミングに必要なソフトウエアについても紹介します。

MSX規格

MSXには、MSX、MSX2、MSX2+、MSX turboRの4つの規格があります。 MSXのゲーム開発用とでしたら入手性と性能、コストのバランスからMSX2がおすすめです。

わたくしはMSXのYAMAHA YIS503IIを使っていました。

YIS503IIは黒色筐体でキーボードの質も高く、ROMスロットが上面2本ですので2本差しで背面に大きくはみ出ることもありません。 MSX1ながらMSX2と同じVDP(YAMAHA V9938)を持ちRGB出力ができる名機です。 YAMAHA独自のサイドスロットにFM音源を装着することで楽器(シンセサイザー)としても活用できます。

大変魅力的なYAMAHA YIS503IIですが、以下の点で不満がありました。

  1. SCREEN0のWIDTHが40桁まで
  2. かなは50音入力

上述の課題を解決すべくMSX2のYAMAHA YIS604/128に乗り換えました。

YAMAHA YIS604/128の筐体はYIS503IIとほぼ同じです。 特徴も同じですので同じような使い勝手となっております。 それでいてYIS503IIの不満点を解決できる機種なのです。

YAMAHA YIS604/128によってYIS503II不満点は以下のように解消されました。

  1. SCREEN0のWIDTHは80桁まで
  2. かなのローマ字入力

80桁表示についてはすべてのMSX2以降の機種で対応されています。 かなのローマ字入力については機種によって対応が異なるようです。 YAMAHA YIS604/128でも[かな]キーを押しただけでは50音入力ですが、[SHIFT]+[かな]とすることでローマ字入力が可能となります。

映像出力方式

MSXの映像出力形式は、以下の4つがあげられます。MSXのプログラミングではRGB出力方式がおすすめです。

  1. RF出力
  2. ビデオコンポジット出力
  3. S端子出力
  4. RGB出力

① RF出力

RF出力はMSXではアナログテレビ放送の1または2チャンネルに映像信号、音声信号を載せる出力方式です。 MSXのRF端子からアンテナ切替え機を経由してアナログテレビ放送が映るテレビ等に接続します。 赤白のファミコンと同じ出力方式です。 アナログテレビが唯一のモニターであれば仕方ないですが、映像のにじみ等によりMSXのプログラミングには向いていないため、おすすめはできません。

② ビデオコンポジット出力

ビデオコンポジット出力は映像信号のうち同期信号、輝度信号、色信号を合成して1本のケーブルで出力します。 そのため、映像のにじみ、ゴーストなどで映像の乱れが生じます。 市販のゲームをするだけなら十分に対応できますが、MSXのプログラミングにおいてはやや不利な出力形式です。 特にSCREEN0のWIDTH80にするときはビデオコンポジット接続では、8と3,S、0など似たような文字を区別することは困難です。

ビデオコンポジット出力についても、機種によりビデオコンポジットに変換する回路設計に差があるため映像の質は様々です。 MSXのなかでもMSXのYAMAHA YIS503はビデオコンポジット出力の映像の質がとてもよく、プログラミングにも耐えうる画質になっています。  ちなみにYAMAHA CX5F、Victor HC-6はYIS503の兄弟機種ですので同じ画質となります。 いずれも映像出力ケーブルが特殊ですが、DIN5ピンコネクタとRCA端子のケーブル(よく見る黄色、赤色、白色のケーブル)で簡単に自作が可能です。

一方で同じYAMAHAでもYIS503IIやYIS604/128のビデオコンポジット出力の画質はあまりよろしくありません。 ですが、この機種はビデオコンポジット出力の画像をカラーからモノクロに切り替えることができます。 背面のC B/Wと書かれたスイッチがあり、C側でカラー(Color)映像に、B/W側でモノクロ(Black and White)映像になります。 モノクロ映像にした場合にカラー映像でにじみなどで読みにくかった文字がくっきりはっきりと映り、MSXプログラミングにも耐えうる画質となります。 RGBモニターが手に入らなかった場合にはこの手段も検討してはいかがでしょうか。 ちなみにYAMAHA CX11はYIS503IIの、CX7/128はYIS604/128のそれぞれ兄弟機種ですので同じスイッチがあります。

③ S端子出力

MSXでS端子出力がある機種は非常に少なく、MSX2+のPanasonic FS-A1WSX、MSX turboRのPanasonic FS-A1STとFS-A1GTとなります。 この3機種をお持ちの方で次のRGB出力対応のモニターのない方はS端子出力がおすすめです。

④RGB出力

MSXで一般的なRGB出力とは水平同期周波数15kHzのアナログRGB出力のことです。 一部機種にデジタルRGB出力がありますが、デジタルRGBアナログRGB変換回路を組み込むことでアナログRGB対応モニターに映すことができます。 ただし、8色にしか対応しておらずゲームソフト本来の色目とは異なる表示となってしまうため、注意が必要です。

MSX2以降の機種でしたらRGB出力が標準装備です。 MSX1ですとYAMAHA YIS503II,CX11、National FS-3000、FS-4000、TOSHIBA HX-10DPN、Victor HC-7,HC-60にはRGB出力があります。 コネクターはDIN8ピン、RGB21ピンのほかに特殊な端子のものがありますので注意しましょう。

ソフトウエア

パソコンを買ったらソフトウエアが必要ですね。 WINDOWSにはプログラミングソフトは標準装備ではないので、メディアから、もしくはオンラインからのダウンロードなどでインストールする必要があります。

MSXにはプログラミングソフトとしてMSX-BASICが標準装備されています。 MSXの電源を入れればまずMSX-BASICが立ち上がります。 FDDを持つ機種ではDISK BASICとなりますが拡張部分以外はMSX-BASICと同じです。 MSXの機種によっては電源を入れた後にランチャーが立ち上がり、ワープロやお絵かきソフトなど独自のソフトウエア、MSX-BASICを選択できるものもあります。

MSXプログラミングはこのMSX-BASICを用いて行います。 今後マシン語も取り入れていきますが、MSX-BASIC上に記載する方法、マシン語として直接入力する方法のどちらかで開発を進めていきます。 後者でであっても開発に必要なツール(マシン語モニターなど)はMSX-BASICで打ち込んでいきますので他のソフトウエアを購入する必要はありません。 また、MSXのプログラミングで便利なツールがありますので別の機会にご紹介します。

MSXプログラミングを映すモニター

MSX実機を映すモニターが必要です。おすすめの入力形式は前項で記載のとおりRGB入力方式です。 音声入力がついていないモニターの場合は別途スピーカーを準備してください。

入力方式

MSX本体の4つの出力形式のいずれかを受け入れられるモニターが必要です。

RF出力はアナログ放送対応テレビ、ビデオコンポジット出力、S端子出力は該当するテレビもしくはモニターが必要となります。 一般的な内容ですので詳細な説明は省略してRGBのみに絞って紹介します。

ブラウン管か液晶か

この選定はかなり頭を悩まします。 ブラウン管によるにじみがドット絵のキャラクターをより際立たせるなどの意見もあります。 画質の良さ、低遅延、レトロな雰囲気を求めるならブラウン管がおすすめです。 ただし、奥行きの少ない机では設置困難です。 机上に設置場所がないなら液晶一択となります。

NationalやSanyoからRGB接続ができるモニターが発売されていました。 また、SONY PVMシリーズなど業務用のモニターでMSXのRGB出力(15kHz)が映るものがあります。 家庭用テレビでもSONYのVEGAシリーズでRGB出力(15kHz)が映るものがあります。 RGBの入力端子がRGB21ピン、BNCコネクタ、AVマルチ入力端子などがあります。

ここまではすべてブラウン管モニターです。

液晶モニターですとSONY LMDシリーズなどの業務用モニターが利用できます。 三菱などPC用のモニターでRGB出力(15kHz)が映るものがあります。

これらモニターが入手できない場合、アップスキャンコンバータを利用する手があります。 アナログRGB(15kHz)をHDMIやRGB(31kHz)に変換することでPC用液晶モニターに映すものです。 電波新聞社 マイコンソフト フレームマイスターが有名ですが、かなりのプレミア価格となっております。

接続ケーブル

いずれの環境であっても、MSX本体からモニターへつなげるケーブルが必要となります。 市販品、互換品(DIN8ピン~RGB21ピン)が販売されていますし、パーツを組み合わせて自作も可能です。 SONYの業務用モニターPVMシリーズ、LMDシリーズはR,G,BとCsyncの各信号がBNCコネクタで接続されます。 MSXのDIN8ピンやRGB21ピンからBNCコネクタへ変換するパーツを自作する必要があります。

これらの選択は予算と設置場所と相談になります。 どんな方法でもよいのでRGBが映る環境を手に入れましょう。

モニターのサイズ

最後にモニターサイズについてですが、どのような環境でMSXのプログラミングをするかによって押すめのサイズは異なります。

顔から60cm程度の距離にモニターを置いている場合、14インチ前後がちょうどよいと思われます。この環境でSONYのLMDシリーズ20インチを試したことありますが、机上での存在感と圧迫感が大きく画面が近いと感じたため14インチがベストと判断しました。

一方で机ではなく、レトロゲームをプレイする環境のように座卓の上にMSX本体を据えてやや離れた位置にモニターを置く場合は、14インチモニターでは入力した文字が判別できなくなりますので、より大きめのモニターが必要になります。

MSXプログラミングをセーブできる機器

MSXでプログラムを入力したら、そのプログラムをセーブする機器が必要です。記録媒体としてはカセットテープ、フロッピーディスクがありますが、現状ではメディア、機器ともに入手性が悪く導入のハードルが高くなっています。 WINDOWSなどのパソコンとのデータのやり取りを考慮すれば最後に紹介するROMカートリッジ型のセーブ方式がおすすめです。

カセットテープ

カセットテープを記録媒体とするデータレコーダーが必要です。 またMSXとデータレコーダーを繋ぐCMTケーブルが必要です。 CMTケーブルさえあれば、PCの録音機能やボイスレコーダーなどの録音機器でもセーブができる場合がありますが音量の調整などで試行錯誤が必要です。 CMTケーブルはDIN8ピンコネクタと3.5㎜、2.5㎜ピンジャックから自作することも可能です。

カセットテープへの記録はテープ長の許す限り可能ですが、MSX-BASIC上からテープ内のファイルリストを得るのも容易ではないため、1本のカセットテープの片面に1プログラムとするのが良いでしょう。 10分テープであれば1本のプログラムが収まります。

フロッピーディスク

FDD(フロッピーディスクドライブ)付きのMSXもしくは外付けのFDDが必要です。 FDDはベルト切れの故障、経年によるヘッド部の故障が起こりえます。 また、フロッピーディスク自体も入手困難となっております。

フロッピーディスクの特徴はMSX-BASIC上から”FILES”と入力することでディスク内のすべての保存したファイルが確認できます。 ”LOAD”での読み込みもカセットテープより早くなっています。

その他

カセットテープもフロッピーディスクも入手性、故障のリスクを考慮すると開発環境としては厳しいものがあります。 また、PCとの連携がしにくく、プログラムコードの管理も難しいです。 その問題を解決するものとして、カートリッジ型のFDDエミュレータとRAMを紹介します。

カートリッジ型のFDDエミュレータは8bits4ever EMU FDCが有名です。 ROMカートリッジ型でマイクロSD内に複数のディスクファイル(DSK形式)を保存できます。 ボタンでディスクの入れかえもでき、小型モニターにディスクのファイル名も表示されます。 Aドライブとして認識され市販ゲームのセーブデータの保存もできます。 マイクロSDカードを通じてWINDOWSなどのパソコンとのデータのやり取りができます。 海外サイトの8bits4ever.netより購入できます。

もう一つはカートリッジ型のRAMです。SD512やCARNIVORE2などの機器があります。 どちらもROMスロットに差し込むことでプログラムをセーブする装置として利用できます。Aドライブとして利用できますが、市販ゲームのセーブデータは保存できないため、MSXからはFDDとは別ものとして認識されているようです。 こちらも、SDカードやコンパクトフラッシュを通じてWINDOWSなどのパソコンとのデータのやり取りができます。海外サイトの8bits4ever.netより購入できます。

MSXプログミング印刷用のプリンタ

MSXのプログラムを打ち込み、エラーが出た場合、エラーが出なくても動作が意図したものではない場合、プログラムのどこに不具合があるかを見極める必要があります。 MSXの場合、画面に表示できるのは24行であり、スクロールもできないためこの作業はかなり大変です。 MSX用のプリンタがあれば、プログラムコードを印刷して確認ができます。 ゲーム開発に必須な装置ではありませんが、あると便利な装置です。 MSX専用でなくとも接続できれば印刷できますが、キャラクターコードが異なると意図した文字が印刷されません。

フォント

プログラムは等幅フォントで印刷します。 プログラムコードを確認する際に、入力した文字桁数と上下の位置が重要な確認項目の一つとなります。 また、プログラム上でスペースの数は重要な要素の一つです。MSX用プリンタのフォントはプリンタ側に組み込まれているため変更できません。

MSX用のプリンタの中にはワープロをターゲットとしたものがあり、文字としての美しさが優先されるためか、数字のゼロと大文字のオー、数字のイチと小文字のエルと大文字のアイなど似たような文字の区別つきにくいものがあります。 特に数字のゼロと大文字のオーはプログラムコード内でも混在しているため、区別をつけるためにもゼロスラッシュと呼ばれるゼロに斜め線が入ったフォントの機種がおすすめです。

印刷方式

MSX用のプリンタには主に以下の2種類があります。

  1. 熱転写方式
  2. ドットインパクト方式

①熱転写方式

熱転写方式はヘッド部分が過熱され、インクリボン上のインクを普通紙に転写する方式です。 インクリボンがなくとも感熱紙であれば印刷は可能です。 後述のドットインパクト方式にくらべ動作音が小さいという特徴もあります。

インクリボンは消耗品であり、機種によっては入手困難となっています。 一方で感熱紙は今でも入手可能ですので、これから購入するなら熱転写方式がおすすめです。

②ドットインパクト方式

ドットインパクト方式はヘッド部に並べられた針のようなものを紙にたたきつけるようにして印字する方式です。 針と紙のあいだに印画紙が挟まれており、印字が行われます。 非常に操作音が大きく、また印画紙も入手困難となっているため、おすすめはできません。

MSXプログラムミングで開発したゲームプレイ用のコントローラー

MSXはパソコンですので、ゲームの操作をキーボードで行うことも可能ですが、拡張端子に接続するコントローラーが販売されています。 ゲームパッド型、アケコン型のほかにもいろいろ種類があります。 操縦桿型(ジョイスティックとも呼ばれる)は操作性がよくないので避けたほうが良いでしょう。 ゲームパッド型かアケコン型かは好みによって使い分ければよいです。

市販のゲームの中には方向キーが斜めに入力されるとキャラクターが止まってしまうものがあります。このようなゲームをするには方向キーを4方向に制限できる機種が良いでしょう。

また、方向キー以外のボタンが1つのものと2つのものがあります。 その並びについては規格がなく、ロードランナーの左右のレンガ堀りの方向が該当ボタンの左右と入れ替わっているものがあります。 そのようなコントローラーでも内部の線の入れ替えだけで左右のキーが入れかられるためご自身で改造しても良いでしょう。

MSX対応のものは価格が高めですので、安価なコントローラーを改造して自作することもできます。